日本漢方の古方派を中心とした漢方薬・処方をご紹介します。

一般の方から専門家まで馴染めるよう、症例・処方薬味・適応疾患・使用目標・漢方の証・方意をご紹介。

三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)-金匱要略-

症例

歯茎出血/男性-漢方処方・応用の実際より引用-

歯茎出血があって毎朝起きると出血し、しばらくすると止まるが昼寝して起きた時も、しばらくの間出血する。しかしその他には特別な症状がない。ただ舌に褐色の苔が少しあり、また考え事をすると酷く出血するということであった。種々の治療を受けたが1年以上たっても少しも効果がなかった。

自分はこれを神経症と考え、下痢しても恐れなければ治るだろうと言い聞かせて三黄瀉心湯加芒硝湯を与えたところ30日ばかりで全治した。

処方薬味

生薬-大黄大黄 生薬-黄連黄連 生薬-黄芩黄芩

適応疾患

脳充血、脳出血、喀血、高血圧症、神経症、不眠症、胃潰瘍、火傷

使用目標

逆上せ気味で顔面は紅潮し、たいていは脈の緊張がよく、腹部は表面は柔軟であっても底に力があり、便秘気味の方で以下のような症状を示す方に用います。

気分がイライラして落ち着かず、精神不安や不眠が合ってみぞおちに食べ物が痞える方。上腹部が痛み、心下部一帯が膨満して硬く張り圧痛がある方。頭痛・耳鳴り・血圧亢進のある方。吐血・下血・潜出血などの諸出血のある方。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、実証
  • 方意;上焦の熱証による顔面紅潮・頭部充血感・心下痞・発赤・腫痛、感情不安定や不眠などの精神神経症状。裏の実証による便秘、血証による出血傾向。
  • 備考;三黄瀉心湯証の方で黄疸を伴う方には茵陳蒿を加えます。出血の方には犀角、時に水牛角を用います。三黄瀉心湯は黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)と非常に似ていますが、山梔子がない点で微妙な違いがあります。

三物黄芩湯(サンモツオウゴントウ)-金匱要略-をご紹介

生薬-黄芩

症例

胃潰瘍後遺症/男性-漢方処方・応用の実際より引用-

男性、会社社長。胃潰瘍の後遺症?および睡眠中の足の攣縮。平生元気な人であるが、終戦後間もないころ胃潰瘍になって胃切除の手術を受けた。しかしそれ以来ときどき胃部が痛むという。奥さんが肝臓ガンで亡くなってから、手が痺れたり、夜中睡眠中に足がびくついて驚いて眼が覚めることがしばしばある。また動悸がしたり、驚きやすく疲れやすいなどという神経過敏の訴えがあった。手足は冬でも暑く夜寝苦しいという。体格はガッチリとしていていかにも事業家タイプの人だが、顏色が非常に悪く、脈は浮大で虚状である。腹証は右に胸脇苦満があり、心下に痞硬があって、臍下は脱力し軟弱無力である。また腰背部の志室の部分に圧痛が著名でいかにも虚しているという常態であった。

この患者に柴胡加竜骨牡蠣湯でも与えようかと思ったが手足の煩熱をめあてに三物黄芩湯を用いることにし胃が時々痛むというので瀉心湯を合方して投与した。1週間目に来院したときには夜間の足のびくつきが全くなくなったという。そのとき、口内炎が出て痛いというので心下痞硬をめあてに甘草瀉心湯に変えた。ところがこれで口内炎は治ったが夜間の足のびくつきがまた出て眠れないという。そこで再び以前の処方にもどしたところ1週間後に来てびくつきは全然おこらず夜も良く眠れると報告した。以来同じ処方を数ヶ月つづけ病気はすっかり治ってしまった。

処方薬味

生薬-黄芩黄芩 生薬-苦参苦参 生薬-地黄地黄

適応疾患

産褥熱、肺結核、不眠症、汗疱状白癬、膿疱症、湿疹、口内炎、高血圧症、血熱の頭痛

使用目標

三物黄芩湯証の方のポイントは手足の灼熱です。結核のような消耗性の病気で、熱が続き、咳が止まらない方で古血があって、身体や四肢の灼熱がひどく、口舌が乾き、心気が不安定な方に用います。夏になると手掌や足裏が暑苦しくて夜もよく眠れない方にも用います。諸種の出血の後に身体が灼熱してだるく、手掌や足の底が灼熱し、唇舌が乾く方にも効果を示します。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、実中間
  • 方意;熱証・燥証による四肢の灼熱感・心胸苦煩・身熱・身重・皮膚枯燥・局所の暗赤色。上焦の熱証による頭痛・心悸亢進・不眠などの精神症状。血証による各種の出血。
  • 備考;三物黄芩湯証の血証は三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)・黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)などと同じく熱証の関わったものであり、熱証を去って出血を止める代表的な方剤です。三物黄芩湯証は血熱と言われ、血証と熱証が共存する体質の方に用います。

酸棗仁湯(サンソウニントウ)-金匱要略-をご紹介

生薬-酸棗仁

処方薬味

生薬-甘草甘草 生薬-酸棗仁酸棗仁 生薬-知母知母
中国39-生薬-茯苓茯苓    

適応疾患

不眠症、ノイローゼ、健忘症、嗜眠症、出血や貧血に伴う神経衰弱、驚悸、疲労倦怠状態

使用目標

肝虚により、体力が衰えて気が昇っている方で眠れない方に用います。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病から太陰病、虚証
  • 方意;気による精神症状:不眠、繊憂細慮。虚証:疲労倦怠、衰憊。上焦の熱証:心中煩悶、身熱。
  • 備考;酸棗仁は炙ったものを用います。

滋陰降火湯(ジインコウカトウ)-万病回春-をご紹介

中国57-生薬-天門冬

処方薬味

生薬-甘草甘草 生薬-白朮・蒼朮白朮 生薬-当帰当帰
生薬-芍薬芍薬 中国57-生薬-天門冬天門冬 生薬-陳皮陳皮
生薬-地黄地黄 生薬-知母知母 生薬-黄柏黄柏
生薬-麦門冬麦門冬    

適応疾患

急性気管支炎、慢性気管支炎、胸膜炎、腎盂炎、腎・膀胱結核の初期、肺結核、喉頭結核、初老期の生殖器障害

使用目標

夕方あるいは夜間によく出る咳に用います。皮膚の色があざ黒い方で大便が固い方に用います。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、虚証
  • 方意;肺の燥証による激しい乾咳、濃厚な喀痰、皮膚枯燥。熱証による消耗性高熱、遷延性微熱。血虚による貧血。
  • 備考;滋陰降火湯は陰を滋し、肝腎の火(熱)を降ろすという意味で名が付けられました。人体根源の元気の元である腎陰の水が欠乏する為、消耗熱を発し体液を虚耗した体質を滋潤によって解熱させるというイメージのお薬です。滋陰降火湯には、四物湯(シモツトウ)の血虚・燥証の方意が含まれています。

滋陰至宝湯(ジインシホウトウ)-万病回春-をご紹介

生薬-枸杞子-地骨皮

処方薬味

生薬-甘草甘草 生薬-白朮・蒼朮白朮 生薬-当帰当帰
生薬-芍薬芍薬 中国39-生薬-茯苓茯苓 生薬-陳皮陳皮
生薬-知母知母 生薬-香附子香附子 生薬-枸杞子-地骨皮地骨皮
生薬-麦門冬麦門冬 生薬-貝母貝母 生薬-薄荷薄荷
生薬-柴胡柴胡    

適応疾患

気管支炎、気管支喘息、肺気腫、虚弱者・老人の慢性呼吸器疾患

使用目標

体力の低下した方、虚弱体質の方の慢性咳嗽に用います。女性の諸種の消耗性疾患で、経絡血脈が不調となったり四肢身体が痩せた方の生理不順を治し、衰弱脱力を補い、消化をよくし、心肺を養い、咽喉を潤し、頭目を清くし、精神を安定し、水毒を治めます。その他に、喘嗽を止め、盗汗をとり、下痢を止め、気うつを開き、腹痛を治し、寒熱を散じ、体痛を取るなどの奇効があります。ただし、本方は女性に限らず男性でも衰弱気味の方にも用います。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;太陰病、虚証
  • 方意;肺の湿証による稀薄で多量な喀痰、咳嗽。脾胃の虚証による食欲不振。血虚・虚証による月経異常、疲労倦怠、羸痩、衰弱、脱力、盗汗。
  • 備考;滋陰至宝湯は婦人の虚労に対して作られた薬方とも言われています。当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)の方意が含まれています。

参考文献・出典

  1. 漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 著
  2. 漢方処方 応用の実際 山田光胤 著
  3. 漢方方意ノート 千葉古方漢方研究会 著
  4. 漢方治療百話第1~3集 矢数道明 著
  5. 腹證奇覧 稲葉克文礼 和久田寅叔虎 著
  6. 漢方処方応用のコツ 山田光胤 著
  7. 薬局製剤 漢方194方の使い方 埴岡博・滝野行亮 共著
  8. 勿誤薬室方函口訣 長谷川弥人 著
  9. 漢方診療30年 大塚敬節 著
  10. 皇漢医学 湯本求真 著
  11. 黙堂柴田良治処方集 柴田良治 著
  12. 類聚方広義 吉益東洞 著