日本漢方の古方派を中心とした漢方薬・処方をご紹介します。

一般の方から専門家まで馴染めるよう、症例・処方薬味・適応疾患・使用目標・漢方の証・方意をご紹介。

潤腸湯(ジュンチョウトウ)-万病回春-

処方薬味

生薬-麻子仁麻子仁 生薬-甘草甘草 風景64生薬-桃仁桃仁
生薬-地黄乾地黄 生薬-大黄大黄 生薬-杏仁杏仁
生薬-柴胡柴胡 生薬-黄芩黄芩 生薬-地黄熟地黄

適応疾患

老人、虚弱者、術後回復期、動脈硬化、慢性腎炎などにみられる常用性兎糞状便秘

使用目標

頑固な便秘の方に用います。麻子仁丸の証に、さらに体液の欠乏の甚だしい状態の方を目標にします。したがって老人や衰弱者に適応が多いです。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病から太陰病、虚証
  • 方意;燥証による兎糞状便・皮膚枯燥
  • 備考;潤腸湯は、麻子仁丸(マシニンガン)の変方で、滋潤の剤です。体液が欠乏して、大腸の粘滑性を失ったために起こった弛緩性または痙攣性の常習性便秘に用います。兎の糞のような硬いコロコロ便が出るのが特徴です。

正気天香湯(ショウキテンコウトウ)-医学入門-をご紹介

生薬-蘇葉

処方薬味

生薬-蘇葉蘇葉 生薬-陳皮陳皮 生薬-生姜乾姜
生薬-香附子香附子 生薬-烏薬烏薬 生薬-甘草甘草

適応疾患

生理不順、眩暈、嘔吐

使用目標

婦人の気の病に用います。或いは痛み、心胸に上衝するものに用います。或いは腹中に結塊があり口渇し、月経不順がある方に用います。眩暈、嘔吐、往来感熱のある方にも用います。

生姜瀉心湯(ショウキョウシャシントウ)-傷寒論-をご紹介

生薬-生姜

処方薬味

生薬-黄連黄連 生薬-生姜乾姜 生薬-生姜生姜
生薬-黄芩黄芩 生薬-甘草甘草 生薬-半夏半夏
中国42-生薬-大棗大棗 生薬-人参人参  

適応疾患

胃腸炎、醗酵性下痢、胃腸過多症、胃拡張、二日酔い、神経性胃炎

使用目標

体力・体格中程度の人(虚実中間の人)が、心下部が痞え、食欲不振・悪心・嘔吐、上腹痛などがあり、或いは腹鳴・下痢などがあって、触診すると心下部が硬く張って抵抗を認めるものがあります。特に胸焼け、げっぷが多く、時には上腹部が痛む方に用います。この時の腹痛は、鈍痛または軽痛でどちらかというと軽い場合が多いです。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、やや虚証
  • 方意;脾胃の水毒・脾胃の気滞による悪心・嘔吐・呑酸。上焦の熱証による心下痞・心下痞硬に用いる方剤です。
  • 備考;生姜瀉心湯は、半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)の乾姜の量を1/3にして、生姜を加えたものです。また生姜瀉心湯は、半夏瀉心湯に腸内の異常発酵が加わったもので、腹鳴・下痢も半夏瀉心湯症よりも強い。

生脈散(ショウミャクサン)-弁惑論-をご紹介

生薬-五味子

処方薬味

生薬-人参人参 生薬-麦門冬麦門冬 生薬-五味子五味子

適応疾患

肺炎、暑気あたり、日射病、出血、激しい嘔吐や下痢、熱傷などの脱水を伴うショック、熱病の回復期

使用目標

暑熱の環境での発汗過多や慢性病の経過時の無欲状態、全身の倦怠無力感、息切れ、呼吸促進、眩暈、口渇のある方、慢性的に続く乾咳・息切れなどに用いる薬方です。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;虚証
  • 十二臓腑配当;脾
  • 方意;気虚・水毒:無欲状態、全身の倦怠無力感、息切れ、呼吸促進、眩暈、口渇。肺の気虚:慢性に持続する乾咳、無痰あるいは少量の粘痰、痰に血が混じる、口や喉の乾燥感や刺激感、微熱、体の熱感、息切れ、全身倦怠感。

小陥胸湯(ショウカンキョウトウ)-傷寒論-をご紹介

生薬-黄連

症例

64歳・男性-漢方処方・応用の実際より引用-

約半月前から、酷く胸や脇腹が痛んで身体が疲れる。朝早くから胸が激しく痛むため目が覚めてしまうという。近所の医者には肋間神経痛と言われて注射を受けているが、少しも良くならないという。体格は背が高くて痩せ型。最近だいぶお腹が出てきたという。食欲が不振で足が冷え、大便が秘結している。血圧は166~100。脈は浮でやや数、腹診すると肋骨弓の下の上腹部が、見たところ肋骨弓にそって全体にやや膨れ、触診すると酷く硬く過敏な圧痛がみとめられた。大柴胡湯の胸脇苦満の抵抗より硬く、圧痛が甚だしい。そのうえ心下部に浸水音がみられた。

この腹証を結胸と思い小陥胸湯加大黄芒硝を投与した。1週間後に、胸脇の痛は殆ど訴えなくなった。その時、肋骨の下はだいぶ硬さが減り、圧痛も減少した。この時の腹証は、ちょうど大柴胡湯湯証の胸脇苦満と考えられた。この患者にはその後、大柴胡湯を投与し1ヶ月ほどですっかり健康を取り戻した。

処方薬味

生薬-栝楼仁・栝楼実栝楼仁 生薬-黄連黄連 生薬-半夏半夏

適応疾患

諸種の熱病、特に肺炎、気管支炎、胸膜炎、胃炎、肋間神経痛

使用目標

胸痛・季肋部の疼痛のある方に用います。この時、胸脇部に充満圧迫感があり、咳をする時や呼吸を深くすると、胸が痛い場合に用います。腹証として心下部、季肋下部に、抵抗および圧痛が、かなり顕著に現れるものが多いです。

漢方の証・方意

  • 病位・虚実;少陽病、やや実証
  • 方意;上焦の熱証・上焦の燥証による胸痛・心下痞硬・胸中煩悶感。時に上焦の水毒による心下痞硬・腹痛・腹鳴・呑酸。

参考文献・出典

  1. 漢方診療医典 大塚敬節・矢数道明・清水藤太郎 著
  2. 漢方処方 応用の実際 山田光胤 著
  3. 漢方方意ノート 千葉古方漢方研究会 著
  4. 漢方治療百話第1~3集 矢数道明 著
  5. 腹證奇覧 稲葉克文礼 和久田寅叔虎 著
  6. 漢方処方応用のコツ 山田光胤 著
  7. 薬局製剤 漢方194方の使い方 埴岡博・滝野行亮 共著
  8. 勿誤薬室方函口訣 長谷川弥人 著
  9. 漢方診療30年 大塚敬節 著
  10. 皇漢医学 湯本求真 著
  11. 黙堂柴田良治処方集 柴田良治 著
  12. 類聚方広義 吉益東洞 著