日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。

初めての方から専門家まで参考になるよう、気味・帰経・効能・適応とする体質と処方例・民間療法をご紹介。

山梔子(サンシシ)

山梔子の本名は梔子です。

梔子は酒の入れ物で、山梔子の形は梔子の入れ物の形に似ているため、梔子と言われました。子は実の意味で山梔子は「くちなし」の実です。シシの形のくちなしの実ということで山梔子という意味になります。

くちなしは白い花を咲かせた後、実を生じさせますが熟しても口が開かないので、口が無いとのことから「くちなし」と呼ばれるようになりました。

山梔子の実は乾燥しにくいので切ってさらして乾燥します。太陽に当てるとかえって乾燥しにくくなります。山梔子の油分が太陽熱で軟化して乾燥すれば、速く乾燥できるが仕上がりは悪くなりますし、また効力も落ちることから黒い山梔子は使用しない方がよいでしょう。

山梔子は乾燥が良く、粒がそろい、内外の色が紅色で丸型のものを良品とします。また色素の酸化により年々色が悪くなるため、新しいものが良いとされています。

気味・薬味薬性

味は苦、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

心・肝・肺・胃

効能

胆汁の固形成分を不変にしながら、分泌量を変化させる力があります。

熱や炎症のために胸が息苦しくなるのを治す働きがあります。ただし肺・心臓・肝臓・胃が弱くて息苦しくなるタイプでなく、元来は強いが熱と炎症で負担がかかったものに用います。

充血や鼻血など局所の熱症状の熱を取り去ります。

利尿剤ではないが排尿の臓器に熱がある場合、その熱をさり結果として利尿することはあります。

胸部の息苦しさを伴う熱感を治し、上衝した気を鎮め精神安定をはかります。

発熱性の黄疸に対して熱を除き、黄疸を治します。

適応とする体質と処方例

  • のぼせ気味で顔面は紅潮し、気分がイライラして落ち着かず精神不安や不眠があって、みぞおちに食物が痞え、便秘傾向がなく黄疸などがある場合に用います。処方例:黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)
  • その他の配合処方例;茵チン蒿湯(インチンコウトウ) 、温清飲(ウンセイイン) 、加味逍遙散(カミショウヨウサン) 、柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)

山茱萸(サンシュユ)をご紹介

生薬-山茱萸

和産の物と朝鮮・中国産の物とがあります。和産のサンシュユの果実に実山茱萸という物があるが上等の品ではありません。

一方中国・朝鮮産は肉山茱萸といって上等なほうとなります。上等のものは紫黒色で酸味と渋みを有し潤いがあり、種子を去った肉の厚いものほどよく、古いのや肉の少ないものはよくありません。

山茱萸は酸味が効くと言われていますが、山茱萸にはいろいろな酸味が含まれておりどの酸味が効くのかは分かりません。

気味・薬味薬性

味は酸・渋、性は微温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肝・腎

効能

腎の強壮剤で小便の近いのを収めます。

小便の排泄に関するホルモン(脳下垂体、副腎皮質等)の分泌を盛んにし間接的に性ホルモンの分泌を盛んにします。

自汗の甚だしいものに用い、体表の衛気を補い止汗します。

胃の弱い人や下痢、嘔吐のある人に注意して飲ませた方がよいです。

適応とする体質と処方例

  • 手足が火照る、唇が乾くとか熱っぽい感じがあり、小便が近いまたは逆に遠くて浮腫みが生じ足腰が弱くなっている方に用います。処方例:八味丸・八味地黄丸(ハチミガン・ハチミジオウガン)
  • 下肢の痛み、腰痛、下肢の浮腫を重視に用います。処方例:牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
  • 疲れやすくて尿量減少または多尿で、ときに口渇のある浮腫み、排尿困難などに用います。処方例:六味丸・六味地黄丸(ロクミガン・ロクミジオウガン)

民間療法

  • 疲労回復・滋養強壮〔内服〕;山茱萸酒を用いる。乾燥した山茱萸200g、グラニュー糖200gをホワイトリカー1.8Lに漬け、2~3ヵ月後に布でこして別の瓶に移す。20~30ccを1日3回服用。山茱萸は漢方に用いられるが、素人の調合は無理。薬酒がおすすめ。

酸棗仁(サンソウニン)をご紹介

生薬-酸棗仁

酸棗仁は、サネブトナツメの種子の中の仁で種子は堅く、これを破砕すれば中に扁平の円形の仁があります。これを薬用にします。

酸棗仁は、有機酸を含み酸味があるので酸棗の名が生じたと言われています。酸棗県から出るものが1番よく効く良品として酸棗の名が得られました。

扁平な卵円形で、なるべく粒の大きいもので、表面は小豆色を呈した光沢があり、味は緩和で油様、ほのかに甘いものが良品とされています。

気味・薬味薬性

味は甘・酸、性は平

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

心・脾・肝・胆

効能

睡眠に対する調整剤、つまり神経が疲労してやたらに眠たい人に用います。

成人に15g~25g用いると鎮静作用を示し、この倍以上を用いると中毒を起こし知覚を失い昏睡します。

寝不足の不眠症には良く眠れるように、寝過ぎる能眠者には覚醒できるように、ちょうど睡眠が適度になるように、睡眠に対して調整的に働くようです。

強壮止汗作用があり、体力虚弱による消耗性発汗に用い、衛気(穀気より生じた陽気で経脈または体表を往来し、病邪から体を防衛する役割)を補い、止汗します。

適応とする体質と処方例

  • 貧血で元気の無い体質で、ホルモンの働きも弱く心臓が亢進し動悸を打つことの多い人が、疲れ過ぎて不眠を起こしている時に用います。処方例:酸棗仁湯(サンソウニントウ)
  • その他の配合処方例;温胆湯(ウンタントウ) 、加味温胆湯(カミウンタントウ) 、帰脾湯(キヒトウ) 、加味帰脾湯(カミキヒトウ)

山薬(サンヤク)をご紹介

生薬-山薬

山薬は山芋の自生根です。山芋の自生するものを、親がなくても自然に生ずるように思って自然生(じねんじょう)という名で呼んでいます。

山芋によく似たものに栽培してつくる長芋があります。山芋の方が長芋より味がよく薬用としても良いと言いますから、やはり山薬に山芋をあてる方が良いでしょう。

山薬は、外面白色または帯黄白色で質が充実して重くて折れやすく、破折面は平坦で粉質であり、味は淡白でやや甘く噛むと粘り気の強いものが良いとされています。

神農本草経には、「虚弱体質を補って早死にしない。胃腸の調子をよくし、暑さ寒さにも耐え、耳、目も良くなり、長寿を保つことができる」とある。

気味・薬味薬性

味は甘、性は微温

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾・肺

効能

胃が弱いのに無理に働いたために生じた過労の熱やだるさを取り去る働きがあります。

胃弱から生じた消化器以外の部分に生ずるいろいろな病状(心臓が苦しいなど)を楽にしたり下痢を止めたりします。

副腎皮質ホルモンのバランスを乱れさせる原因に効いて、バランスを整え性ホルモンの分泌を盛んにし精力をつけさせます。

口渇を鎮め、糖尿病の体質改善に用いられます。

口渇、尿利頻数または減少、腰痛 、下腹部の弛緩または緊張あるいは煩躁、短気などを目標とし、萎縮腎、尿毒症、動脈硬化症、高血圧 、脳出血、性的神経衰弱、遺精、早漏、掻痒性皮膚炎などに用います。

適応とする体質と処方例

  • 手足が火照る、唇が乾くなど熱っぽい感じがあり、小便が近いまたは逆に遠くて浮腫みが生じ、足腰が弱くなっている方に用います。処方例:八味丸・八味地黄丸(ハチミガン・ハチミジオウガン)
  • 下肢の痛み、腰痛、下肢の浮腫または、尿利の減少、蛋白尿に重点を置いて用い、扁桃腺炎後の腎炎、産後の腎炎にも応用できます。処方例:牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)

民間療法

  • 滋養、強壮薬で止瀉の効があるため、民間では夜尿症、遺精、盗汗などに、1日5~10gを通常他薬と併用し煎剤として用います。
  • 滋養強壮〔内服〕山薬酒。乾燥した山薬200gを細かく砕いて、グラニュー糖150gとともにホワイトリカー1.8Lに漬け、2~3ヵ月後にこす。1日1回30㏄を、就寝前に飲むとよい。

山椒・蜀椒・花椒(サンショウ・ショクショウ・カショウ)をご紹介

生薬-山椒

山椒はミカン科の山椒の果実を乾燥したものです。

山椒には色々な種類があるようで、原植物は同一であるとは言えないようです。この色々な種類の中で、蜀州から産した蜀の山椒が良品だったので山椒は蜀椒とも呼ばれています。

日本では朝倉山椒というものがありますが、昔、朝倉山で多く産出されたのでそう言われていたようです。

薬用として使う場合は、果実を取り柄のみを使用します。

また果実は椒目と言い、粒がなるべく大きく若干の赤みのあるものが良いようです。

気味・薬味薬性

味は辛、性は大熱、有毒あり

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾・胃・肺・腎

効能

消化不良の健胃薬です。

咳やしゃっくりを止めます。

駆虫剤として使用します。

スタミナがつきホルモンの分泌を盛んにします。

適応とする体質と処方例

  • 体質の虚弱な腸内に水とガスを停滞させている腹痛の激しい方に用います。処方例:大建中湯(ダイケンチュウトウ)

参考文献・出典

  1. 漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 訳・著
  2. 近代漢方薬ハンドブック(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ) 高橋良忠 著
  3. 漢方のくすりの事典 鈴木洋 著
  4. 薬徴 吉益東洞 著
  5. 中薬大辞典 小学館
  6. 薬草カラー図鑑1~3 主婦の友社
  7. 平成薬証論 渡邊武 著
  8. 本草綱目 李時珍 著
  9. 医心方 食養篇 丹波康頼 著
  10. 中国の薬用菌類 劉波 著
  11. 薬草の詩 鹿児島県薬剤師会
  12. 和漢薬の良否鑑別法及び調整方 一色直太郎 著