地黄(ジオウ)をご紹介

日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。

初めての方から専門家まで参考になるよう、気味・帰経・効能・適応とする体質と処方例・民間療法をご紹介。

地黄(ジオウ)

地黄は、アカヤジオウやシロヤジオウの根を薬用に使用しますが、シロヤジオウの栽培が困難なのでアカヤジオウの根を薬用として使用しています。

アカヤジオウの根を水に入れると、比重がより小さい時は水の表面に浮き、中程度の物は水中に浮遊します。比重の大なる物は水底に沈んでしまいます。

水を宇宙と考えれば、水の表面は天で、底は地に相当し、浮遊している物は地上で歩いている人に相当するので、水の表面の物を天黄、浮遊するものを人黄と名づけ、この比重の大なる物を薬用にすることにより、地黄の名前を得ました。

地黄には、古来よりシロヤジオウ、アカヤジオウの2品があり、シロヤジオウは根が細く、皮薄、肉が厚く、薬として上品なのですが、腐敗しやすいために次第に栽培されなくなりました。従って現在市場に出ている品はアカヤジオウのみです。

地黄には、採掘後の加工法によって3種類に分けられています。生地黄、乾地黄、熟地黄の3つになります。

生地黄:採掘後、日陰の砂地に貯えたもの

乾地黄:採集後、曝乾したもの

熟地黄:採集後、酒にて蒸乾したもの

気味・薬味薬性

味は甘・苦、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

心・肝・腎

効能

血行障害、出血、閉経等の血の症に効きます。

ホルモンを分泌させ増血の手助けをします。

適応とする体質と処方例

  • 女性の方で、さまざまな出血や貧血の徴候があり、皮膚乾燥の傾向があり瘀血、生理不順、自律神経失調などの症状がある方。処方例:四物湯(シモツトウ)
  • 貧血および皮膚の枯燥を治し、血行を良くするものとして。処方例:十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)
  • 強壮、滋潤薬。処方例:八味丸(ハチミガン)。ただし、胃腸が弱くて下痢しやすい方、胃内停水のある方、地黄剤を用いて食欲が減退する方には適さない。

竹節人参(チクセツニンジン)をご紹介

生薬-竹節人参

ウコギ科のトチバニンジンの根茎を、湯通しして薬用として竹節人参とします。地面から上の葉は人参のオタネニンジンによく似ているので、オタネニンジンの代用として使用します。

現在は人参が高すぎるので竹節人参を使用しますが、竹節人参も一時期より高くなっているので、もはや人参の代用にはならないようです。

オタネニンジン(人参)とは、人参は生根を水参と言い、調整法により白参と紅参とに大別します。

白参:白参は水参の細根(ヒゲ根)及び皮を剥いで陰干ししたものです。円柱形紡錘形で通例2~5の小枝を分かち、根頭には残茎またはその跡があります。外観は黄褐色で縦シワと枝根を除いた跡があります。味は初めやや甘く後僅かに苦味があります。

紅参:通例2~3本の小枝を分岐し、各小枝から多数の小枝を分かつ、外観は淡褐色~淡紅色半透明で角質様です。1斤(600グラム)中の本数によって品質が決まり、25根を最上品としています。

ヒゲ人参(毛人参):白参を調製する時に除いた細根で、通例1~2ミリ以下でヒゲ状を呈します。本来の漢方では、サポニンが強すぎる劣品部分のため日本以外では破棄します。

気味・薬味薬性

味は甘・苦、性は涼

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肝・脾

効能

去痰及び清熱の作用があります。

適応とする体質と処方例

  • 皮膚や胸部の肺や肝臓・膵臓の胸脇苦満を同時に呈する汗かき症でない体質の方に用います。処方例:柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)

知母(チモ)をご紹介

生薬-知母

知母はハナスゲの根茎です。ハナスゲの葉はスゲの葉によく似ており、葉の間から花が出てくるので、花のスゲからハナスゲという名を得ました。

また、知母の名は、ハナスゲの古い根の側に子が生じ、その根の形がチボウ(アリの卵とアブ)のようなところからチボウと呼ばれ、それが誤って知母となりました。

知母はよく肥大し、外面は黄褐色で、黄色の毛をよく除いた質の柔潤なものが良いとされています。

気味・薬味薬性

味は苦、性は寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺・胃・腎

効能

肺や胃に炎症があったり、肺の働きが亢進して気管支の痙攣を起こし、きつい咳を起こしている肺の炎症や亢進を鎮めます。

肺の熱のために水分が無くなり、排泄するべき水が無くなるために弱ってしまった腎を盛んにします。

知母エキスは大腸菌による発熱を解熱させ、呼吸中枢を麻痺し、血圧を降ろさせます。

清熱・解熱・止渇・鎮咳・煩熱に用いられます。

適応とする体質と処方例

  • 手足の関節が痛く、身体の痩せている人で、腎の働きが悪く、脚は腫れて脱するように感じられ、痛みのために眩暈や短気・吐き気の催す方に用います。処方例:桂枝芍薬知母湯(ケイシシャクヤクチモトウ)
  • 熱症状と大煩渇(激しい口渇)が第一目標として用いられる。処方例:白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)
  • 精神的疲労がり、他の臨床症状がこれといってない時の不眠に用いられます。処方例:酸棗仁湯(サンソウニントウ)

釣藤鈎(チョウトウコウ)をご紹介

生薬-釣藤

カギカズラの鉤(かぎ)の付いた茎枝を乾燥したものです。

古くは民間療法として樹皮を用いていましたが、経験的に鉤刺を用いるようになり、漢方薬に配合されるようになりました。

釣藤鈎は光沢があり滑らかで赤褐色ないし紫褐色で、肥大し、なるべく主軸の少ないものが良いようです。

気味・薬味薬性

味は甘、性は微寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肝・心包

効能

精神的な興奮症状や筋肉の痙攣、ひきつけに用います。

小児の神経症やチック、婦人のヒステリーに柴胡等と配合します

また、高血圧症及び随伴症状に用います。

適応とする体質と処方例

  • 比較的虚弱体質の人で、肝・胃の弱い神経症で、頭痛 、眩暈、肩凝りなどの愁訴が多い方に用います。処方例:釣藤散(チョウトウサン)
  • 疲れやすく、最小血圧値の高い高血圧症で、同時に尿蛋白陽性や腎硬化症の方に用います。処方例:七物降下湯(シチモツコウカトウ)
  • 躁が鬱に変化した時や、胃アトニー、神経衰弱、半身不随などの経過中に、臍の左の腹部大動脈の拍動が甚だしく亢進する特有の腹証を呈するものに用います。処方例:抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)

猪苓(チョレイ)をご紹介

生薬-猪苓

猪苓はブナ・ミズナラ・オウナラ・モミジ等の根に寄生するチョレイの菌体です。

猪苓の形は、ちょうど黒くて猪の糞に似ています。猪の糞を苓通と言い、そこで猪苓の名を得ました。日本ではオニノカナクソとも呼ばれています。

猪苓は肥大し、外面が黒褐色でやや光沢があり、内面は白く充実し、質の軽いものが良いとされています。

気味・薬味薬性

味は甘・淡、性は平

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

腎・膀胱

効能

体力のある人の利水として働きます。

猪苓は茯苓 や沢瀉と同様に利尿作用がありますが、異なる点は解熱、消炎および止渇作用が強いことであり、茯苓のように心悸亢進を治す作用や、沢瀉のように冒眩を治す作用がないことです。

猪苓は、実証に用いる利水剤であって、陰虚証の浮腫や小便不利には、かなり大量を用いても却って浮腫を増し、時には尿閉を起こすこともあるという報告があります。

相当の高熱を解熱する働きがあります。

適応とする体質と処方例

  • 胃内、細胞間、体腔内に停水があって、血管に導水されず、血管の水不足から口渇をおこし、小便の不足を起こしているものに用います。処方例:五苓散(ゴレイサン)
  • 黄疸で、喉の渇きが激しく小便の出が悪いもの、大便は便秘しないもの。あるいは水を飲みすぎて吐く者や、頭に汗をかくものに用います。処方例:茵蔯五苓散(インチンゴレイサン)
  • 腎炎や血尿に用います。処方例:猪苓湯(チョレイトウ)

参考文献・出典

  1. 漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 訳・著
  2. 近代漢方薬ハンドブック(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ) 高橋良忠 著
  3. 漢方のくすりの事典 鈴木洋 著
  4. 薬徴 吉益東洞 著
  5. 中薬大辞典 小学館
  6. 薬草カラー図鑑1~3 主婦の友社
  7. 平成薬証論 渡邊武 著
  8. 本草綱目 李時珍 著
  9. 医心方 食養篇 丹波康頼 著
  10. 中国の薬用菌類 劉波 著
  11. 薬草の詩 鹿児島県薬剤師会
  12. 和漢薬の良否鑑別法及び調整方 一色直太郎 著