日本漢方の原料である漢方生薬と有名な民間薬をご紹介します。

初めての方から専門家まで参考になるよう、気味・帰経・効能・適応とする体質と処方例・民間療法をご紹介。

麦芽(バクガ)

大麦(イネ科)の少し発芽した種子を乾燥したものです。

大麦を水に浸し、発芽して3~5mmになった後、取り出して日干しにしたものです。

ヨーロッパでは、有史以前から主食の一つでしたが、グルテンを含まない為パンには出来ず、現在は食用ではなく飼料やビール、ウイスキーの醸造用として栽培されています。

気味・薬味薬性

味は甘、性は平(味は鹹、性は温とする出典もあります)

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾・胃

効能

ジアスターゼを含む健胃消化薬です。

麦芽を炒り、乳汁のうっ滞に用います。(乳汁分泌を抑制するので授乳中の婦人には用いない方が良いです)

適応とする体質と処方例

  • 胃腸が弱く冷え性で、特に手が冷える人が始終に頭痛 、頭重感、眩暈を訴え嘔吐感のある方に用います。処方例:半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)

麦門冬(バクモンドウ)をご紹介

生薬-麦門冬

ジャノヒゲ(ユリ科)の塊状根を乾燥したものです。

大きい物では、薬用部の芯を抜いて使用します。昔はこの芯抜きを、子守が幼児をおんぶしながら歯で噛んで抜いたようです。現在では、子守りも不足し人件費も高く付くので、到底芯抜きは望めそうもありません。

芯である中心柱を抜いたものを丸麦と言い、上品になりますが、現在は殆ど市場品が無いと言われています。

ジャノヒゲの根は竜の髭のようであるので、リュウノヒゲより転じてジャノヒゲになったとか。又翁のことを尉(ジョウ)とも言い、ジャノヒゲは翁の髭のようなのでジョウノヒゲがジャノヒゲになったとも言われています。

麦の根を「バクボン」と言い、ジャノヒゲは麦の根に似ており、ジャノヒゲの葉は冬にも枯れないので、冬を耐えるというところから「バクボントウ」が「麦門冬」(バクモンドウ)になったと言われています。

品質は、淡褐黄色で肥大して重く、柔軟で甘味の多いものが良いとされています。

常緑の為、庭園や公園の下草等に栽培されています。

気味・薬味薬性

味は甘・微苦、性は微寒

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

心・肺・胃

効能

心臓が虚弱な方の去痰・鎮咳・咽喉不利・肺部の苦しみを楽にする働きがあります。

体内の津液を補い、口渇を止め、陰虚発熱(血虚や津液不足により発熱したり、機能亢進すること)による寝汗を治します。

適応とする体質と処方例

  • 手が火照り唇の乾燥があり、ホルモンの失調やバランスの維持不能症で血行不良による冷え性を起こし、冷え逆上せのある者に用います。処方例:温経湯(ウンケイトウ)
  • 上焦の熱証による精神症状:不眠症・心悸亢進・感情不安定に用います。処方例:竹茹温胆湯(チクジョウンタントウ)
  • 補陰作用として、慢性的な煩躁(はんそう)や不眠、口渇、排尿障害等に用います。処方例:清心蓮子飲(セイシンレンシイン)

薄荷(ハッカ)をご紹介

生薬-薄荷

目草の葉を漢方薬で使いますが、薄荷または薄荷葉の名で呼ばれています。

目草は、葉に熱湯を注いで出てきた侵液にはメントール等の精油が入っているので、目がさっぱりするようになったり、タンニンも少量含んでいるので目のただれが治ったりします。

こんなところから目の薬の草と呼ばれ目草の名を得ました。

現在の目薬にもメントールを使用したものが沢山あります。

気味・薬味薬性

味は辛、性は涼

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

肺・肝

効能

肝気のうっ滞を解きます。

解表作用として、頭痛 ・咽頭痛・目の充血を取り去ります。

皮膚につけると、冷却作用・麻酔作用があり、湿布や軟膏の原料等に使用されます。

少量使用することによって食欲を亢進させる健胃薬となります。

適応とする体質と処方例

  • 肝障害から生じる神経症状(頭重、眩暈、不眠、イライラ、午後から生じる熱感・逍遙熱)に用います。処方例:加味逍遙散(カミショウヨウサン)

蜂蜜(ハツミツ)をご紹介

生薬-蜂蜜

ヨーロッパミツバチ又はトウヨウミツバチがその巣に集めた甘味物です。

日本で養蜂飼育されるのは、ヨーロッパミツバチの方で、殆どがショ糖ですが、ミツバチの消化酵素によってブドウ糖と果糖に分解されています。

気味・薬味薬性

味は甘、性は潤

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

効能

血糖が高く粘っている血液を潤わせ、糖を下げます

糖がエネルギーとなり滋養強壮となります。

適応とする体質と処方例

  • 口渇が酷く、盛んに水を飲みたがり、水を多量飲んで頻繁に尿が出る方に用います。処方例:八味丸(ハチミガン)

半夏(ハンゲ)をご紹介

生薬-半夏

カラスビシャクの根茎の皮をむき、薬用に使用します。

カラスビシャクの花が、ちょうど匙のような型の杓に似ていることからこの名がつけられました。

半夏は、玉が大きく、色の白いものが昔から上品とされています。よく皮付き半夏の黒いものが出回ることがありますが、これは良品とは言えません。また、褐色や黒味がかった半夏は、中が腐っている場合がありますので注意が必要です。

乾燥が良く粒が大きく丸く、質が硬く、充実し、外皮が綺麗に除かれ、色が白く、泥が付着していないものを良質とします。

半夏は生で食べると、味にエグミがあります。煎じるとそのエグミも取れます。基本的に煎じて内服しますが、粉末にする場合は水に4~5日程晒し、ミョウバンと生姜と一緒に刺激が無くなるまで煮込みます。

気味・薬味薬性

味は辛、性は温、有毒あり

帰経(東洋医学の臓腑経絡との関係)

脾・胃

効能

悪心や嘔吐・痰飲に頻用します。

鎮咳・去痰作用:多くの咳嗽に用いるのですが、特に湿性の咳嗽を除き、鎮咳去痰に有効です。

制吐作用:胃部から突き上げてくる嘔吐に用い、胃内停水を除き、胃の機能を調えます。

 

適応とする体質と処方例

  • 「狐惑の病」と言われる、急迫症状に用います。応用として、ベーチェット病や口内炎に用います。
  • 1日数十回催す激しい下痢に使用します。ビールを飲んで下痢をする時は、甘草瀉心湯証が多いです。処方例:甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ)
  • 体質・体力が中程度で、みぞおちが痞え、食欲不振、吐き気、腹鳴のある下痢等を抑えます。処方例:半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
  • その他の配合処方例。温経湯(ウンケイトウ)、 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)、 五積散(ゴシャクサン)、 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
  • 半夏と生姜または乾姜は、『傷寒論』における止嘔を目的とした最も基本的な配合法です。半夏に生姜または乾姜を加えることにより、半夏の毒を制し止嘔力を増強します。

民間療法

  • 吐き気:カラスビシャクの根(半夏)15gにひねショウガ(生姜)の切片3片を加え、2合半の水で半量に煮詰めた液を冷たくし、小さじ2杯ずつ1日数回に分け飲用すると効果があります。
  • 黄土を20gほど加えると一層効果がありますし、茯苓5gを加えても効果が高まります。

参考文献・出典

  1. 漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 訳・著
  2. 近代漢方薬ハンドブック(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ) 高橋良忠 著
  3. 漢方のくすりの事典 鈴木洋 著
  4. 薬徴 吉益東洞 著
  5. 中薬大辞典 小学館
  6. 薬草カラー図鑑1~3 主婦の友社
  7. 平成薬証論 渡邊武 著
  8. 本草綱目 李時珍 著
  9. 医心方 食養篇 丹波康頼 著
  10. 中国の薬用菌類 劉波 著
  11. 薬草の詩 鹿児島県薬剤師会
  12. 和漢薬の良否鑑別法及び調整方 一色直太郎 著